体育大会を前に本校正門横の横断幕(先輩たちがつないでくれた思いや願い)について説明したいと思います。
今から5年前の2020年4月、日本では緊急事態宣言が発令されており、未知のウイルスに世界中が大混乱におちいっていました。その年の入学式は何とか実施できたものの、生徒のみなさんは自宅待機を余儀なくされ、その状況が数か月間続きました。そんなある日、学校協議会委員の方から「地域や学校を明るくするために横断幕をかかげてはどうだろうか」という意見がでました。ただ、生徒も登校していない中でその意見は検討されることはありませんでした。
その後、生徒のみなさんの登校も再開され、少しづつ学校生活が戻りつつありましたが、ソーシャルディスタンス、手洗い、換気、消毒、黙食など以前までの学校生活とはほど遠い状況にありました。
生徒会メンバーと担当の先生、校長との面談の中で「今私たちにできること」が話題にあがりました。その時に以前、学校協議会委員の方から横断幕の意見があったことを伝えたところ、そのプロジェクトを生徒会に任せてほしいと話が進み、そこから横断幕プロジェクトがスタートしました。
以下は当時の生徒会長から地域の人たちにあてたメッセージです。
「花よりも 花を咲かせる 土になる」
みなさんこんにちは。生徒会長のフジオです。
今回生徒を代表して、横断幕について、そして標語にこめられた私たちの想いについて綴らせていただきます。
まずは、最前線で戦ってくださっている医療従事者のみなさん、そしてこの世の中を支えてくださっている全てのみなさんに心よりお礼申し上げます。
再び緊急事態宣言が発令された今、お互いを思いやる気持ちを大切にして支えあっていくことが何よりも大事なことだと私たちは思っています。
さて、このコロナ禍で、私たち道中生に何かできることはないか、また、何ができるのだろう、というところからこの横断幕作成プロジェクトが始まりました。
まず私たちが考えたのは、どんなメッセージを私たち自身や保護者・地域の人たちに発信するかということです。
そこでこの横断幕に入れる標語を募集し、三度にわたる投票を経て、この言葉に決まりました。
花よりも 花を咲かせる 土になる
~みんなの心に素敵な笑顔を咲かせよう!~
この言葉は、石川県星稜高校野球部名誉監督の山下智茂さんの言葉「花よりも 花を咲かせる 土になれ」をアレンジしたものです。
この言葉を使用するにあたって、山下先生に使用許可のお願いをしたところ快諾して頂くことができました。
また、サブタイトルの「みんなの心に素敵な笑顔を咲かせよう!」は、PTAの方々に考えて頂きました。
私たちはこれまで多くの方々の支えによって「喜び」という花を幾つも咲かせることができました。
そして今、私たちに何ができるかと考えたとき、人を助け、支える側となり花を咲かせるお手伝いができるのではないかと考えたのです。
この温かい人たちが住む道明寺の地域が、もっともっと温かい地域になるよう、私たち道明寺中学校の生徒はこの言葉の意味を噛みしめ、前に進んでいきたいと思います。
長くなりましたが、私たちの想い、伝わりましたでしょうか?
まだまだ未熟な私たちは、これから何度もつまづいて転んで倒れながら、自分の道を見つけ真っ直ぐ進んでいきます。
なかなか熱いメッセージでしょう。実はこの話には続きがあって
「土になる」のはあなたたち(生徒)ではなく、私たち大人(教師や保護者、地域のみなさま)の役割であるべきで、あなたたちには「花を咲かせてほしい」と思っているのですが…と伝えたことがありました。その時の生徒会のみなさんから「何ができるのか、何かしなければという思いに大人や子ども、年齢は関係ないと考えています」という回答がありました。
また、この6年間で2度、地域の人からこのスローガンの掲示をやめてほしいという意見がありました。「犠牲的な考えを美徳化するもので、このような思想が戦争などにつながる」「花を咲かせるのは子どもたちであるべきだ」というものです。一理ある大切な留意点だと考えています。
ただ、私が当時の生徒のみなさんから感じたものは、もっと純粋で単純で崇高(すうこう)なものでした。
「こけている人がいれば手をさしのべる」「困っている人のためにお手伝いする」そんなあたりまえの優しさがそこにはありました。そしてそのための準備はいつでもできているという意思表示でもあったのだと感じています。






